戦時中に空襲を受けた地域では、発注者の判断により予定されている鋼管杭や鋼矢板打設工事の安全確認として危険物を対象とした磁気探査が実施されます。
航空機より落下された爆弾等は飛行速度、高度および土質により貫入深度が異なります。従って工事対象区域での空襲時のデータが残されている場合はそれを基に、無い場合は当時の一般的な値を使用して空中での挙動を計算し、地中では杭の挙動として貫入深度を計算し、その深度までの探査を実施します。
探査には、浅い深度を対象とする水平探査と深い深度を対象とする鉛直探査があります。
水平探査
地表面より2m程度(250kg爆弾の場合)の安全確認として実施します。地表面から30cm程度の位置で磁気探知機を水平に移動させて探査します。ライフラインの影響がある場所では地中レーダ探査と併用することで精度が向上します。
鉛直探査
鋼矢板や鋼管杭打設時の安全確認として実施します。ボーリングによる削孔箇所にステンレスまたは塩ビ管を設置し、鉛直方向に探査します。探査対象物によりますが、250kg爆弾の場合半径2m程度の範囲で安全を確認します。
存在する強磁性体について調査する鉛直磁気探査は、危険物のみでなく、鋼矢板、鋼管杭等の既設構造物の状況確認(シールド工法の推進に障害とならないか位置、深度を事前に把握)に有効な探査方法です。
ただ通常の磁気探査で用いられる一軸型の磁気探知機では測定点からの距離は判明しますが、どの方向に存在するかは特定できないため、複数の探査孔が必要となります。そこで弊社では、1つの探査孔で位置を特定でき、また従来測定不能とされていた既設構造物付近での危険物探査を可能にした三軸磁気センサによる磁気探査方法及びその装置(特許第3858003号)を使用して実績を上げております。
※三軸磁気センサとは特定の一軸方向のみを検知する磁気コイルを互いに直交するようにX方向、Y方向、Z方向に配置した磁気センサで1つの探査孔で磁気異常物の深度および平面位置の特定が可能です。
三軸センサの実験報告書(PDF)
GL-13m付近にあると想定されていた埋設管の位置確認のための三軸センサによる探査。ほぼ想定通りの位置にあることが確認されました。
シールド工法の障害となる可能性がある鋼管杭の水平位置および根入れ下端深度確認のための三軸センサによる探査。高い精度が必要でまた深度もGL-23mと深いことから探査孔の傾斜測定も実施。下端部の設計位置とのずれが40cm程度と判明し工事に支障がないことが確認されました。