■はじめに
三軸磁気センサーとは、特定の一軸方向のみを検知する3つの磁気センサーを各軸が互いに直交するようにX方向、Y方向、Z方向に配置したものです。
本来、地磁気の変化や材料の磁性などセンサーを固定して、わずかな磁気変化を測定するものですが、地下構造物調査,危険物探査に利用できるように仕上げたものです。
本センサーに組み込まれている三軸磁気センサーは、検出コイルが優れているため小型であり、これを鉛直方向や水平方向に移動できるようセンサー2個を軸調整して一体型としています。
探査の際には、探査孔にガイド付アルミパイプを用いることでセンサーの回転による測定誤差を解消し、解析については移動方向に離間して配置した2組の磁気センサーで計測した磁界の強さを利用します。
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▼探査孔詳細 |
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■一軸タイプの磁気センサーとの比較
現在、一般的に使われている一軸タイプの磁気センサーにおいては、鋼管杭等の平面位置,および根入れ調査を行う場合、正確な位置を把握するには最低3箇所の探査孔が必要と言われています。(図例参照)
図1は橋梁基礎杭の調査を行った結果ですが、削孔位置前面は擁壁であり、鋼管杭近辺に多数の探査孔を設ける事は不可能でした。
この際、弊社の三軸磁気センサーでは、1箇所の探査孔のみで鋼管杭の平面位置、根入れ測定を行えることにより、鋼管杭の設計値との位置ズレ等が測定出来ます。
磁気記録は図4に示すような波形となり、深度20m付近に、根入れ下端と思われる磁気反応が現れています。
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※図1の赤線は鋼管杭位置実測結果
図1.調査結果平面図 |
■磁気記録の特徴
通常、地中に鉛直方向に設置された鋼管杭、鋼矢板(以下鉄製構造物)等による磁界は、その上端、下端部分で顕著に変化しますが、その途中部分でも、材質(特性)の変化、構造(厚み)の変化、損傷等により大きく磁性が変化し、それに伴う磁界が構成されている場合が多いです。図4の20m以浅に見られる小さな磁界変化がこれにあたります。
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【事前準備】
まず、現地のボーリング孔にアルミガイドパイプを挿入する際、レール軸の方向を決定し固定します。写真のようにプローブ基線方向(X,Y)を設定し、孔内傾斜測定や三軸磁気センサーによる磁気探査に使用します。 |
▼プローブの軸方向設定
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図3.傾斜測定による孔内 |
【孔内傾斜測定】
地下構造物調査の目的で、三軸磁気センサーによる精密磁気探査を行う場合、まずボーリング孔の傾きを測定する必要があります。状況によっては20m削孔時、最下部で、削孔位置から1m程度歪んでいる事もあるため、孔内傾斜測定を行い、構造物位置を算出する際の補正データとします。
図3の測定結果は、図1のプローブ基線方向に対応しており、ボーリング孔の歪が平面的に確認できます。 |
【三軸センサーによる磁気探査】
弊社の三軸磁気センサーでは、2通りの測定方法が可能であり、強磁性体(鋼矢板,鋼管杭)の根入れ測定においては、プローブ先端部のセンサーのみを使用します。
有効測定範囲も広いため、強磁性体近傍でもレンジオーバーすることなく測定可能です。
※FS(±200μT) |

▼橋梁基礎の鋼管杭、根入れ測定 |
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【探査孔設置時に必要な削孔径】
現在探査孔設置する場合、φ110mmステンレス製ケーシングパイプでボーリングした孔内に、アルミガイドパイプ(φ80mm)を挿入することで、磁気測定を行っています。
三軸センサープローブでは、径が大きく、削孔にも大径の孔を要していましたが、現在開発中の新型機においてはプローブ径の縮小化が実現したため、使用するアルミガイドパイプ径も『φ80mm⇒φ47mm』と縮小され、従来の一軸タイプのセンサーと同様のφ66mmボーリングに対応することが出来ました。 |
■磁気記録の検証
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図4の磁気記録は、図1の探査孔での測定結果であり、鋼管杭の根入れ位置が顕著に確認できます。この結果より、鋼管杭の打設位置が、設計値とズレていることが判明しました。
鋼管杭の平面位置は、磁気記録のX,Y成分から導かれ、プローブからの距離はZ成分で算出されます。(図1参照) |

図4 図1探査時の磁気記録 |
図5はプローブから約1.5m離れた位置に鋼管杭が存在している状況での磁気記録であるが、24m付近にわずかに根入れ下端と思われる波形が見られます。このような場合、三軸磁気センサーに2個のセンサーが装備されていることを利用し、これらが測定する成分の差分データを用いることで、僅かな磁界変化を捉えることが出来ます(図6) |
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図5 単独センサーのみ使用時 |
図6 差分データ使用時 |
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